アップルが1月19日(現地時間)に行った教育関連の発表会で新サービスが発表されて以降、日本の教育系メディアはこの話題でもちきりである。
アップルはこの発表会で大きく3つの重要なサービスの発表を行った。「iBooks2」、「iBooks Aurhor」のリリースと「iTunes U」のアップデートの発表である。
簡単にサービスの内容に触れれば、「iBooks 2」はiPadで教科書を購入し、閲覧できるためのツール。「iBooks Author」は教材を誰でも無料で製作できるツール。アップデート後の「iTunes U」は教授と学生側の双方で授業に関する共有を行えるツール。ということになるだろうか。
すでに多くのメディアに取り上げられている通り、アップルの新サービスはたしかに革新的で、未来の教育を大きく変える可能性を持っている。いや、確実に教育現場を変えるだろう。
だが、同時にアップルの本社があり、もっとも大きな市場であるアメリカの教育の現状についても確認しておかなければならない。
まず前提として、これらの発表されたサービスは基本的にはiPadやMacなどのアップル製品を前提としているということを忘れるわけにはいかない。
アップルによれば「iBooks 2」によって提供される電子教科書はほとんどのタイトルが15ドル以下で提供される予定であるとのこと。だが、これらの電子教科書を読むためにはタブレット端末のiPadを購入しなければならない。iPad端末の価格は一番安い16GBモデルで約500ドル。また、電子教科書を自分で作ることができるいっても、作るための「iBooks Aurthor」はMac端末にしか対応していない。これらの恩恵を享受するためにはまず技術的・金銭的な制約があるのだ。
近年日本ではOECDのPISA(国際学力到達度調査)の結果が話題になることがしばしばある。その中ではフィンランド型教育に注目が集まったり、それを2009年度の調査では中国上海の読書教育に注目が集まったりと様々に上位国の教育がとりあげられる。しかし、そこでポジティブにアメリカの教育がとりあげられることはほとんどない。
2009年度調査でのアメリカの順位は、科学リテラシーは17位、読解力は14位、数学リテラシーは25位である。これに対してアメリカの教育長官アーン・ダンカンは「スプートニク以来のショック」であると述べたそうだが、アメリカの学力は決して高いとは言えないのだ。
ハーバード大学、イェール大学など世界に名だたる大学がいくつもあるアメリカで初等中等教育のレベルが低いということをどうとらえるのか。そこで問題になってくるのはアメリカの地域格差の問題である。実はアメリカの比較的裕福な地域にだけ注目するとアメリカのPISAの結果はトップレベルになるというアメリカ教育省の報告がある。つまり、アメリカの教育のレベルが低いように見えるのは教育格差が拡大しているという別の問題が内包されているのである。
この話を踏まえて、改めて今回のアップルの発表を考えてみると、実はこのサービスの恩恵を受けられるのは少なくともアメリカにおいては、もともと学力の高い裕福な層ということになるのかもしれない。
教育格差の縮小を掲げて2003年にNCLB法を施行したアメリカ政府はこのアップルの発表をどのように受け入れるのだろうか。
もし将来的にiPadを学校現場で採用するという場合には、やはり公的支援を手厚くするということになるのだろうか。
アップルとアメリカ教育の関係には今後も注目していかなければならないだろう。
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