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012学校教育

2010年8月19日

広がる学生による学習支援活動―学習の機会均等をめざして 【特集/教育】

8月9~13日の5日間、様々な事情で塾に通えない中学3年生のために、無料の都立高校向けの受験対策講座「タダゼミ」が開講された。講座を主催したのは、NPO法人キッズドア。学生ボランティアと協力し、2009年より日本の子どもの貧困問題、特にも教育格差の解消のために教育支援事業「ガクボラ」の実施に取り組んでいる。

「タダゼミ」が開講されたのは、夏休み中の8月9~13日の5日間。都立高校を受験したいが、家庭の事情などから塾に通えない、家庭教師をつけることができないなどの事情を抱えた中学3年生37人が集まった。中学生の指導にあたったのは、東大・慶応大・一橋大などの学生ら。13時から16時までの3時間指導にあたり、中学生といっしょに問題集を解きながら、苦手分野の克服に取り組んだとのことだ。「タダゼミ」夏期集中講座の報告は、キッズドア&ガクボラ活動ブログへ。

 

活動ブログによると、講座に参加した中学生からも、その親からも好評だったようだ。講座最終日の日程が終わった後の修了式のあとも、中学生と指導側の学生が楽しく会話を続けていたという。たった5日間でも、教える側・教えられる側の間の絆が芽生えたのだとしたらすばらしいことだ。

学生ボランティアの協力のもとに運営されている「ガクボラ」の活動には、現在160人を超えるメンバーが登録しているという。活動メンバーの学生の参加動機はそれぞれだろうが、メンバーの誰もが「教育格差をなくしたい」という思いを少なからず持っているようだ。学生たちの熱いモチベーションには、今の日本における教育格差の問題が反映されている。学生らは、自らの経験や大学の授業などを通して、顕在化する教育格差をひしひしと感じていたに違いない。

 

全国学力テストを受けた公立小学校の6年生を対象にした調査によると、最も平均正答率が高かったのは、家庭の年収が1,200万円~1,500万円の世帯の子どもたちだったという。年収200万円未満の世帯と比べると、算数・国語ともに約20ポイントも差があったという。教育機会均等の理想とはうらはらに、経済力と学力との連関は誰の目にも明らかになりつつある。特にも、都市部では「経済力≒学力」の構造の定着が著しい。

筆者は東北地方の公立高校の出身で、現在は都内の国立大学に通っている。「教育格差」の存在を感じ始めたのは大学に入ってからだ。高校2年の1年間だけ家庭教師をつけてもらった以外に、塾通いなどの学校外の教育サービスを受けたことはない。周囲でも塾や予備校に通っている友人の割合は低く、受験対策はすべて学校がやってくれた。大学に入るために塾に通わなければならない、という感覚はまったくもってなかった。

しかし、大学に入ってほかの都道府県、とくにも首都圏の友人と話すと、受けてきた教育の違いにおどろくばかりだった。小学校もしくはそれ以前から塾通い、家庭教師。電車の中の小学生の会話に「ヘンサチ」という言葉が登場する。都市部では、塾に通うことが大学まで安定したキャリアを形成するための前提条件になりつつあることを知った。ただでさえ生活費がかかる都会の暮らしの中で、子ども1人にかける教育費を想像するとぞっとしてしまった。同時に、「経済力≒学力」の構造の中で、学歴形成からはじき出される子どもも存在しうる悲しい現状に思いをはせた。

公立高校授業料無償化が話し合われ、教育格差是正の動きが始まっているが、まだまだ問題は山積みだ。そんな中で実施された「タダゼミ」では、NPO・学生が自ら教育格差の現実と向き合う意思が見えた。中学受験、高校受験、大学受験、受験に向けて必死に努力した経験がある人は、自然と努力の意志のある後輩を応援したくなるもの。そんなモチベーションを取り込んだ「タダゼミ」の取り組みには、教育格差問題を打開する可能性の一端が見える。

 

「タダゼミ」は、今後も都立高校入試終了まで、継続的に生徒の指導を行っていくという。次回の予定は、8月29日の「都立高校入試徹底解剖」。また、現在「タダゼミ」の秋・冬コースの受講生募集が始まっている。

申し込みはこちらのページから。

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